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Tags: AutonomousDriving, 安全
ZFの新しいアクティブ・ダンピング・システム、sMOTIONが、ドライビングの快適性、ダイナミクス、安全性を新たな次元に高めます。高度に自動化された運転では、これは大きな進歩です。
Martin Westerhoff, 7月 31, 2018
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Martin Westerhoff マーティン・ウェスターホフはテクノロジーのジャーナリズムを研究し、以来、車両とテクノロジーについて執筆しています。モータースポーツとレーシングカーをこよなく愛します。
長いビニール製の寝袋が、特大のバンドエイドのようにアスファルトの上に固定されています。その理由はただ一つ。上を通過する車にできる限り大きな揺れを起こすためです。そしてドライバーは、この特殊な揺れや振動の上でも動じずにブルーのコンパクトMPVのハンドルを握っています。後部座席の乗員の一人は、このミニバンが路面の寝袋を全速力で横断しようとする時、窓の上の取っ手を握りしめました。しかし、寝袋による盛り上がりに車内ではほとんど感じられません。「素晴らしい!」 取っ手を握りしめていた手を放しながら、後部座席の乗員は驚嘆の声で言います。

アクティブであることは、安全性と快適性の向上と等しい

アクティブであることは、安全性と快適性の向上と等しい

車両を運転していたスベン・グレーガー(Sven Greger)は、満足げな笑いを浮かべます。彼は、セミアクティブおよびアクティブ・シャシ・コンポーネンツの基本開発を担当するZFリサーチエンジニアです。グレーガーにとって、性能試験場でこのように反応する乗員(その多くはバイヤーや海外の自動車メーカーのリサーチエンジニア)はすでに見慣れた光景です。彼は、「ZFのsMOTIONフルアクティブ・シャシ・システムは、車体の動きに対応して新たなレベルの自由をもたらします。各ホイールがそれぞれアクティブに対抗運動をして、車体が大きく揺れないようにします」と言います。一方でsMOTIONは、快適性の向上だけでなく、現在のシステムをさらに凌ぐダイナミクスと安全性を可能にします。カメラと連携することで、シャシ・システムは路面状況を特定し、例えば道路の凹凸を予期してそれに応じて設定を変更させることができるのです。
sMOTIONは、車輪をアクティブに引き上げたり押し下げたりすることができます。
— クリストフ・エルバー(Christoph Elbers)博士、カー・シャシ・テクノロジー開発バイスプレジデント

ダンピング・システムは、多くの状況に対処しなくてはなりません。荒れた路面では必然的に直接的な衝撃が発生しますが、サスペンションがこの衝撃を吸収します。ステアリングホイールは障害物を乗り越える時に上昇します。この際、ステアリング・ナックルと車体の間のスプリングが圧縮され、 再び伸びます。ダンパーの仕事は、振動を素早く減衰することです。車両は、直接的な衝撃に加えて駆動力、制動力、そして遠心力にも耐えなくてはなりません。ドライビングダイナミクスに関連するこれらの力は、車体を3つの空間軸(下図参照)の方向に動かします。そこで、異なる運転状況それぞれに合った減衰力が必要となるという課題が生じます。カーブで車体の動きを最小限に抑えるには、高い減衰力が必要です。やや起伏のある路面での走行では、必要な減衰力は小さくなります。また、タイヤと地面が安全に接触するには中程度の減衰力が必要です。「従来のダンパーは、スポーティな走りか快適性かで妥協するしかありませんでした。もちろん、有効な妥協ではありましたが」と、ZFのカー・シャシ・テクノロジー開発バイスプレジデントのクリストフ・エルバー(Christoph Elbers)博士は言います。

車両力学によって車体が動き始めると、sMOTIONが作動

CDCダンパーシステムの進化

CDCダンパーシステムの進化

ZFのセミアクティブ連続可変ダンピング・コントロールContinuous Damping Control (CDC) システムは、このように目的が競合するという問題をすでに数十年前に解決しています。1997年には、ZFのセミアクティブ・ダンピング・システムが乗用車用に量産開始されました。2つのステアリングホイールと車体センサーからの各空間軸に関する信号と、制御ユニットに保存されている車速、横加速度、ステアリング角などの追加情報に基づき、システムは運転状況を常にモニタリングし、各ステアリングホイールへの最適な減衰力を計算します。ダンパーには、1つまたは2つの電子制御ソレノイドバルブがあり、これらのバルブがミリ秒単位のオイルフローを調整して減衰硬度を調節します。ZFのシャシ専門家のエルバー博士は次のように説明します。「sMOTIONはさらに一歩進めます。十分なテストを経たCDCの基本設計を使用して、ステアリングホイールをアクティブに引き上げたり押し下げたりすることができるダンパーを開発しました。」
「今日まで、車体の振動は、状況に関する知覚的なフィードバックをドライバーに提供するためにはある程度まで許容範囲内あるいは望ましいものでさえあるとされてきました。しかし、高度に自動化された車両または自動運転車両では、車内にいる全員が乗員となります。このようなシナリオでは、振動、衝撃、ローリング、ピッチングは人々の読書や作業の妨げとなります。この結果いわゆる乗り物酔いになり、読書や作業ができなくなります」と、エルバー博士は続けます。「この影響は、ドライバーも乗員も進行方向での景色が見えなくなる革新的な座席配置ではさらに増大します。」 解決策は、唯一アクティブ・シャシの中にあります。sMOTIONは未来に向けたZFのソリューションで、現在すでに運転の快適性を向上させています。乗員は、運転プロセスにほとんど邪魔されることなく、作業をしたりリラックスしたりしながら走行時間を過ごすことができます。

滑らかな乗り心地を実現するパワフルなアクチュエータ

滑らかな乗り心地を実現するパワフルなアクチュエータ

sMOTIONは、周波数最大5ヘルツで発生する動き(0.2秒の振動に相当)を調整することができます。ZFのテスト車両では、これらの調整は各ステアリングホイールの2.5kWのアクチュエータによって行われます。電動ポンプは、ダンパーピストンの上下の油圧を上昇させてアクティブにピストンを動かします。マンホールの蓋や継ぎ目、粗いアスファルト、砂利などの高頻度の揺れに対応するため、sMOTIONダンパーにはCDCソレノイドバルブへ戻るバイパスがあります。
13.6 馬力
sMOTIONテスト車両では
4つすべての2.5kWアクチュエータの合計動力に相当

sMOTIONのテクニカルプロジェクトマネージャであるアヒム・トーマ(Achim Thomä)は、彼自身と彼のチームが前例のない問題に直面していることに気づきました。乗員がほとんど何も感じることができないくらいに密かに振動が止められたら、システムの効果をどのように伝えることができるのか、という問題です。解決策は単純でした。デモンストレーションの目的で、スベン・グレーガーはタブレットを使用して停止している車両のダンパーを、個々に、2基ずつ、または4基一度に制御します。彼が画面をタップすると、バンがロデオの馬のように上昇・下降したり、ローリングしたり揺れたりします。この時、座席に座っているエンジニアは、車はどこにも行かないと知りながらも、取っ手を握りしめてしまうでしょう!
性能試験場でのsMOTION

記事要約: フルアクティブsMOTIONダンピング・システムによって、運転はさらに快適になるだけでなく、よりダイナミックに、より安全になります。課題は、異なる運転状況それぞれに合った減衰力が必要であるという点です。例えば、カーブで車体の動きを最小限に抑えるには、高い減衰力が必要です。しかし、やや起伏のある路面での走行では、必要な減衰力は小さくなります。また、タイヤと地面が安全な接触を維持するには中程度の減衰力が必要です。カメラと連携することで、シャシ・システムは路面状況を特定し、例えば道路の凹凸を予期してそれに応じて設定を変更させることができるのです。sMOTIONは、高度に自動化された運転でも大きな役割を果たします。