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WRCとは

年明けの1月、各カテゴリーに先駆けていち早く開幕戦を迎えるWRC。正式名称を「世界ラリー選手権(World Rally Championship)」といい、F1(フォーミュラ・ワン世界選手権)、WEC(世界耐久選手権:World Endurance Championship)およびWTCC(世界ツーリングカー選手権:World Touring Car Championship)と並ぶモータースポーツの世界選手権シリーズの一つで、パリ(仏)に本部を置くFIA(国際自動車連盟:Fédération Internationale de l'Automobile)公認のもと行われている。

1973年に始まったWRCは、岩や大きな窪みが散在する未舗装の山道、細く曲がりくねったアスファルトの林道から、雪や氷に覆われた轍の深い路面など多様なコースで競技が行われ、最もタフなカテゴリーの一つとして知られる。2016年シーズンは、真冬のモナコから始まり、欧州、中南米、中国、オーストラリアと14か国で全14戦が開催され、国によって競技中の気温はマイナス30℃からプラス30℃近くまでと非常に過酷な環境となる。

競技は、通常3日間の準備セッションを経て金曜日から日曜日までの3日間に亘って行われる。「スペシャル・ステージ(SS)」と呼ばれるタイム計測区間が合計15から25か所設けられ、合算タイムによって順位が決まる。助手席に座るナビゲーターは、事前に作成したコース図を見ながら情報を伝え、ドライバーはそれに基づいて迅速に加減速やステアリング操作を行ってブラインドコーナーを全速力で駆け抜ける。従って、二人のコンビネーションが勝利のカギを握る。ナビゲーターが英語では「co-driver = 副運転手」と呼ばれるのは、このような理由もあると考えられる。

こうした過酷な競技に使用されるマシンは、市販車をベースに改造が施された「ワールド・ラリーカー(WR Car)」と呼ばれる。シーケンシャル・ギヤボックス(シフトレバーを「H」パターンではなく前後に動かす事でシフトアップ、シフトダウンするトランスミッション)を搭載するフルタイム4WDのWRカーは、ターボで過給され約300馬力を発生する直列4気筒1600ccエンジンにより、最高速度は時速320キロを超える。

昨年の振り返り

WRCには世界的な自動車メーカーが会社を挙げて、いわゆる「ワークス」体制で取り組んでいる。昨シーズンは、フォード(フィエスタRS WRC)、シトロエン(DS3 WRC)、フォルクスワーゲン(ポロR WRC)およびヒュンダイ(i20 WRC)の4メーカーが参戦。その中で、全13戦中、実に12勝を挙げたフォルクスワーゲン(VW)がマニュファクチャラー(製造者)、ドライバー両部門を制し3年連続のダブルタイトルを獲得した。

VWのエースは、フランス人のセバスチャン・オジェ。チームメイトのヤリ-マティ・ラトバラ(フィンランド)と共に、ワークスチームの「ポロR WRC」のステアリングを握った。ノルウェーの若手、アンドレアス・ミケルセン(ノルウェー)がサブチームで3台目のマシンを駆り、自身にとってWRC64戦目となる第12戦スペインでキャリア初優勝を飾った。

VWが圧倒的な速さを見せつけた2015年シーズンだったが、老舗シトロエンも意地を見せ、4月に行われた第4戦アルゼンチンではクリス・ミーク(イギリス)とマッズ・オストベルグ(ノルウェー)が1-2フィニッシュを果たした。この結果、年間ランキングでもオストベルグとミークがVW勢に次ぐ4位、5位を獲得した。

また、ベルギーの新鋭ティエリー・ヌーヴィルが参戦2年目のヒュンダイで健闘。ドライバーズランキングで6位に入ると共に、マニュファクチャラー部門でもシトロエンに次ぐ3位に食い込んだ。一方、フォードは2名の若手ドライバーを起用。エルフィン・エバンス(イギリス)が速さをみせて上位争いをする場面も見られたがアクシデントも多く、最終的にはヌーヴィルに次ぐ7位でシーズンを終えた。

ZFの関わり

ZFは、WRCにVWのテクニカルパートナーとして参戦している。「ポロR WRC」には、ZFが開発したクラッチシステムとダンパーが搭載されて2013年のデビューシーズン以降の3連覇に貢献している。VWとの関係が深いZFは2006年から「オフィシャル・パートナー」としてVWと共に様々なモータースポーツ活動を行っており、ダカールラリーで2009年から3年連続総合優勝を果たした「レーストゥアレグ」も、ZF製クラッチとショックアブソーバを使用した。

今シーズンの見どころ

1月21日(木)から24日(日)にモンテカルロで開幕戦の競技が行われる2016年のWRC。新しい車両規定が導入される2017年に向け、マシン開発に専念する事を決めたシトロエンがワークス参加を見送ったため、実質的に3メーカーによるバトルとなる。ここまでデビュー以来負け知らずのVW勢が今シーズンも速さと強さを維持し、4年連続のダブルタイトル獲得なるか。それとも、3メーカー中、唯一新型マシンを投入するヒュンダイ勢が躍進を見せるのか。一方、フォード勢は昨シーズン、シトロエンで活躍したオストベルグを獲得して巻き返しを図る。

ZF製クラッチシステムとダンパーを装着し、これまで39戦中34勝を挙げたフォルクスワーゲン「ポロR WRC」は、タイトル防衛に向けて昨年モデルに改良を加えたマシンで今シーズンに臨む。2016年仕様のマシンは、既に6日間、合計およそ1000キロに亘るテストを終えており、チームはタイトル防衛に確かな手ごたえを感じている。

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